SHISEIDO THE TABLES

【REPORT#3】甲府の老舗味噌蔵「五味醤油」が仕込む、在来種づくしのオリジナル味噌

SHISEIDO THE TABLESと老舗味噌蔵の五味醤油と一緒につくるオリジナル味噌。その仕込み現場を訪ねて、山梨県・甲府へ。

蔵つきの酵母や乳酸菌が反応して、唯一無二の味に

日本全国におよそ1000軒近くある“お味噌屋さん”のなかで、木桶をつかって熟成させている蔵は、ほんの数十軒。SHISEIDO THE TABLESは、そのうちの一軒、山梨の甲府で明治元年からつづく五味醤油でつくったオリジナル味噌と甘酒を使っています。仕込みが行われた4月下旬、五味醤油を訪ね、どのような味噌に仕上がるか、六代目、五味仁さんに聞いてきました。

蔵の中に入ると、味噌の発酵する独特な匂いに包まれながら、目についたのが大きな木樽。人の背丈よりも高い樽が10個近く並んでいます。
「それぞれの樽にいる微生物が違うから、樽ごとに味も違ってくるんですよ」というのは五味仁さん。昨年、先代から代表を引き継ぎ、古くからこの地域に伝わる甲州味噌をつくっています。

この甲州味噌、実はちょっと変わったつくりかたをしています。通常、味噌は大豆、塩、そして米麹か麦麹か1種類の麹でつくりますが、甲州味噌は米麹、麦麹、2種類の麹を使用。そうすることで、うまみ、あまみ、こくが複雑にまざりあったワイルドな味になります。
「うちは熟成に木桶をつかっているうえ、米麹と麦麹をブレンド。マニアックな人から見ると珍しいことをやっているんですよ。でも、僕にとってはこれが味噌。昔から慣れ親しんできた味なんです」

そんな五味醤油でつくってもらっているオリジナル味噌も、SHISEIDO THE TABLESだからこそできる趣向がこらされているもの。原料に、長野の「こうじいらず」という大豆、山形のお米「さわのはな」でつくった米麹という、それぞれの地域で古くから栽培されている在来種を使用。五味さんにとっても初めての仕込みとなりました。

「品種を在来種で限定して麹や味噌をつくるという試みは贅沢な実験のよう。僕も家の仕事を継いだ15年前、地元山梨の原料だけでつくりたいと思いながらも、それをすると店の味を変えてしまうので、できなかったこと。おもしろい試みだと思っています。
前回つくった白味噌は甘く上品な味ですが、今度の赤味噌は、複雑味のある五味醤油らしい味になると思うんです。熟成はうちの蔵つきの酵母や乳酸菌などの微生物が反応して風味に影響を与えるはずなので」

大人気の「手前味噌ワークショップ」は、 みんなでわいわいつくるから楽しい。

実は五味醤油は、遠方からも多くの人が訪れる人気の蔵でもあります。というのも、五味さんは手づくり味噌のおもしろさを伝える伝道師のような存在で、11〜4月の6ヶ月間に「手前味噌ワークショップ」を100回近く開催。味噌づくりをもっと気軽に楽しんでほしいという思いから「てまえみそのうた」まで製作。アニメに合わせて、味噌づくりの楽しさを、歌って踊りながら伝える五味さんの人柄にひかれ、毎年味噌づくりの季節になると参加するリピーターが多くいるのです。

そんな五味さんに発酵のおもしろさについて尋ねたところ、「体験談でいうと」と前置きをしながら「自分で味噌をつくる人に悪い人はいないような気がするんです」との答が返ってきました。

「だってこのせわしない世の中で、わざわざ味噌をつくる必要があります? できあがるまで半年も待つんですよ。でも、一度、味噌作りのワークショップに参加すると、みなさん毎年来るんです。味噌づくりの特性だと思うんですけどね、仲間でつくるほうがいいんです。茹でた大豆をつぶしたり、麹と塩をまぜたり、全部の材料をあわせて味噌玉をつくったりという作業は、おしゃべりをしながら仲間とやるのが楽しいんですよ」

SHISEIDO THE TABLESスタッフ一同も、この日、味噌仕込みをお手伝い。味噌玉をつくり、仕込み樽へと詰めていく作業を、みんなでわいわいと行いました。

「今、発酵が注目されていますが、どうしてこんなに人気かと考えると、作業をして一定期間待つということが、ある意味の精神安定剤になっている部分もあるかもしれないですね。どんなに忙しくても、発酵に自分のペースをあわせて、“私、味噌つくっているから大丈夫”というように(笑)。実際、栄養的にもすごくいいから健康にもいい」

8月開催の「五季膳の会」では、 3種の甘酒飲み比べ、4種の味噌食べ比べを実施

現在、SHISEIDO THE TABLESのメニューで、五味醤油でつくったオリジナル味噌を使っているのは、平日の昼のお食事「古来種野菜のお弁当」の味噌汁に加え、甘いものの「白味噌のクレーム・ブリュレ」。さらには「米麹甘酒」も味噌と同じく、山形県の在来種の米「さわのはな」を使用。五味醤油でつくってもらっています。

「今、SHISEIDO THE TABLES用につくっている甘酒は、掛米をつかうスタイル。硬めに炊いて予熱をとった米に麹とお湯を入れて温めてつくっています。米麹だけでもできるのですが、糖化できるデンプンが少ないから甘さの限界がある。でも、掛米を使うとお米のデンプンを麹菌がどんどん分解するので、甘くなる要素が強いんです。時間はかかりますが、掛米も麹として使う米も同じ品種でやるということはめったにないこと。おもしろい取り組みだと思っています」

そうしてできた甘酒は、甘みを強く感じながらもすっきりとした味わい。
とはいえ、麹だけでつくった甘酒と、実際どのくらい味が違うのでしょう? そんな疑問を五味さんに投げかけたところ、「それなら飲み比べをしてみましょう」ということに。

8月23日の「五季膳の会」では、第3部に五味さんがゲストで登場。その際のスペシャルドリンクとして、

1)SHISEIDO THE TABLESで普段だしている甘酒(掛米を使用)
2)米麹100%の甘酒
3)麦麹100%の甘酒

の3種を用意してもらうことになりました。

「麦麹でつくる甘酒は、うまみ成分が多いため雑味がでてしまって、多分、おいしくないです(笑)。あれ、でも、もしかしたら玄米甘酒みたいにおいしくなるかな? つくってみてからのお楽しみですね」

さらには、もうひとつのスペシャルとして、お味噌の食べくらべ体験もご用意いただく予定。SHISEIDO THE TALBESオリジナルの赤味噌を「仕込み始め」「2ヶ月後」「できあがり」の3種類と、現在使っている「白味噌」を試食。同じ原料でも、分量と熟成の期間によって、どのように風味が変化していくかを、五味さんの解説つきで体験します。発酵のおもしろさを再発見できる夜になりそうです。

取材・文/岡田 カーヤ、写真/浦川 良将

イベントのお知らせ

8月23日『五季膳の会』の会に、SHISEIDO THE TABLESオリジナル味噌をつくっていただいている山梨で150年つづく味噌蔵「五味醤油」六代目、五味仁さんをお招きします。
発酵や味噌づくりのメカニズムやおもしろさをうかがいながら、原料の違う甘酒や、熟成期間や分量の違う味噌を食べ比べします。五味醤油×SHISEIDO THE TABLESならではのスペシャルを体験しにきてください。

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