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【SHISEIDO THE STORE ウィンドウギャラリー】ウィンドウギャラリーで輝く、新しい時代を照らす光

2010年代を締めくくる師走となりました。気忙しく銀座の街を行き交う人々の胸にも、特別な思いが去来する瞬間があるでしょう。11月21日から新たな展示となったウィンドウギャラリーのテーマは「火の章」。アートディレクターのミヤケマイさんは火が放つ光に着目し、2020年という新たな時代を迎えるウィンドウギャラリーを特別な光で満たしました。

火の明るさに見出す、希望と温もり

陰陽五行の「火」は、生命を再生させるエネルギーそのもの。ミヤケさんは、自然を変容させる力を持つ火の光を見つめ、私たちに与えるふたつの力をウィンドウギャラリーのテーマとしました。
中央通りに面したウィンドウギャラリーは、新しい年を迎える未来への希望にあふれた光。2020年にオリンピックの聖火が灯る、東京の街の晴れがましさも象徴しているようです。ミヤケさんは、世界的に注目されるデザイナー、マイケル・アナスタシアデスさんによる照明器具と、新人アーティスト、上野真希さんの映像作品を組み合わせました。
対して花椿通りのウィンドウギャラリーは、クリスマスシーズンを迎える街の気分と呼応するあたたかな光で包んでいます。「クリスマスの記憶は手づくりのものや、クラフト感のあるものと結びついています」というミヤケさん。カラフルなパッケージに包まれたプレゼントやクリスマスカードを贈り合う家族や親しい人々と過ごす、ホリデーシーズンの空気感を、コラージュした紙とドローイングを組み合わせたグラフィックアートを得意とする新人、久保悠香さんの作品で彩りました。

左:中央通り右側のウィンドウギャラリー。昨年発表された「アレンジメンツ」のROUNDとDROP UPをミヤケさんがセレクト。アクリルの矢印は「光陰矢の如し」にかけ、新たな時代へと向かう時の流れを示唆。写真/繁田諭(以下同)。照明協力/日本フロス
右:DROP UPのフレーム内に、アクリルドローイングとプロジェクションマッピングを構成した上野さんの作品を設置。光の奥に銀座の街の風景が続く。身体性が重視されるオリンピックイヤーを意識し、蝋燭の人形を展示。

グラフィカルな光の中に閉じ込めた街の風景

中央通りのウィンドウギャラリーの宙に浮かぶ円やしずく、直線といったさまざまな幾何学形のフレームは、デザイナー、マイケル・アナスタシアデスさんがデザインした「ARRANGEMENTS(アレンジメンツ)」というLED照明です。天井から吊り下げる照明器具を一般的にペンダントライトと呼ぶことから、ジュエリーを下げるように照明器具で空間を美しく照らしてほしい、とさまざまなフォルムのパーツを組み合わせるエレガントな照明をデザインしました。特殊な技術によるジョイントで、フレームとフレームをつなぐだけで外枠がきれいに発光するマジカルでスマートなプロダクトです。ミヤケさんはROUND、DROP UP、LINE の3つのフォルムをセレクトし、フレーム内の背景の壁に、アーティスト、上野さんのドローイングを設置。右側のウィンドウのDROP UPには銀座の中央通りに降りしきる雪を、左側のウィンドウのROUNDには、五輪にちなんで火の輪の映像を映しました。

左:中央通り左側のウィンドウギャラリー。ROUND中央に向けて放たれたアクリルの矢は、来年が当たり年になるように、との願いを込め、請願成就の縁起物「当たり矢」もイメージしている。炎の輪のプロジェクションを上野さんが制作。
右:動的な映像とクリアな白い光の輪が、空間に不思議な奥行きを出している。照明器具の上の蝋燭の人形が、絶妙なバランスでバーの上に立つ体操競技の選手のよう。

空間に奥行きをつくる小さなプロジェクションマッピング

上野さんは、大学の通学路や故郷の身の回りの自然など、町で切り取った何気ない日常風景の絵を「動かしたい」と思い、ドローイングにプロジェクションマッピングを重ねることを思いついたそう。今年、美術大学の卒業制作展で上野さんの作品に魅力を感じたミヤケさんが声をかけ、ウィンドウギャラリーに参加しました。
木々の香りや風の匂いなど、動物的に街を感じる自分自身の感覚を、ドローイングにまとわせる手段として映像を重ねている上野さん。電柱もなくビルの高さも整っている銀座の中央通りという、特別な街の特別な通りを描くと決めた時、雪の向こうの風景が直感的に浮かび上がったそう。「アナスタシアデスさんの照明器具を点灯させたまま、フレーム内部に映像を映す調整が難しかったですが、全体のプロセスはとても楽しいものでした。ディレクターのミヤケさんと、デザイナーの存在によって、自分自身の作品が変化していくことも楽しめました」と続けました。

左:花椿通りに面したウィンドウギャラリー左側。一枚の大きな紙に、ホリデイパーティーにまつわる美しいもの、楽しいものを想起させるポジティブなイメージをコラージュと色鉛筆で詰め込んだ。
右:同じくウィンドウギャラリー右側。左側同様のイメージによるグラフィックアートの小品を、ランダムに背景に展示したことで、空間に動きが生まれた。

コラージュで散りばめた幸せな冬のイメージ

花椿通りは、同じく美術大学の卒業制作展でミヤケさんが声をかけた久保さんがグラフィックアートを制作。クリスマスシーズンにふさわしく、人々の高揚する気持ちに寄り添うプレゼントのパッケージやドレス、アクセサリーなどのイメージを、さまざまな紙を用いたコラージュと色鉛筆で仕上げました。1年のうちで師走から新年にかけた冬の季節が最も好き、という久保さんは、街行く人がそれぞれ抱く冬の持つイメージを集めたような展示にしようと考えました。
「12月、1月の時間の流れを、ポジティブで純粋に楽しく感じてもらえるようなイメージを組み合わせています。ミヤケさんが作品のクラフト感を大切にしてくれたので、色鉛筆のゆらぎのあるニュアンスを生かしたり、自分自身も楽しんで制作することができました」。
作品展示する機会は室内がほとんど、という久保さん。ウィンドウギャラリーで初めて展示をしたことで、作品が街を行き交う他者とつながっていることを実感したと言います。アーティストやデザイナーがテーマに寄り添いながら生み出した思いが、光や風、空気感も含めて街にとけ出し、人々と一体となる。そのような瞬間が積み重ねられ、ウィンドウギャラリーは銀座の文化の一部として育てられているに違いありません。

左:幾何学のフォルムを散りばめたグラフィックアートは、中央通りのウィンドウギャラリーに設置した、アナスタシアデスさんのアレンジメンツの印象と連動する。
右:小さな鉄製の薪ストーブと束ねた薪は、秋の「金」と春の「木」をつなぐ五行のテーマのメタファー。鍋に入った雪だるまは、温暖化に対するミヤケさんの風刺的なメッセージ。
ミヤケマイ MAI, Miyake

美術家。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自のエスプリを加え、過去と現在、未来までをシームレスにつなげながら物事の本質を問う作品を制作。骨董、工芸、現代アート、デザインなど既存のジャンルを超えて活動している。金沢21世紀美術館、大分県立美術館(OPAM)、水戸芸術館、Shanghai Duolun Museum of Modern-Art、POLA美術館、釜山市美術館などで展示。メゾンエルメス、慶応日吉往来舎、イタリア文化会館など企業や大学のコントラクテッドワークを多数手がける。作品集に『膜迷路』(羽鳥書店/2012年)、『蝙蝠』(2017年)など。京都造形芸術大学特任教授。

マイケル・アナスタシアデス Michael Anastassiades

1994年ロンドンでデザインスタジオを設立。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートとインペリアル・カレッジ・ロンドンで工業デザインと工学専攻。特に照明器具のデザインで知られている。シンプルな幾何学的形状、金属やガラスなど、空間を反映するマテリアルを用いる洗練されたデザインへの評価は高く、Studio Mumbaiはじめ、デイヴィット・チッパーフィールドやジョン・ポーソンなど著名な建築家との協業も数多く手掛けている。

上野真希 Maki, UENO

1995年福岡県生まれ。2015年多摩美術大学絵画学科油画専攻入学。19年同大学同学科卒業。Art Program Run企画展「黄泉とき! おばけずかん」(2017年アートラボはしもと)にキュレーション参加。

久保悠香 Yuka, KUBO

1995年生まれ。2018年京都精華大学デザイン学部デザイン学科グラフィックデザインコース卒業。Graphic Arts Exhibition(2017年)、ARTIST’S FAIR KYOTO(2018年 BLOWBALL)。

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