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【SHISEIDO THE STORE ウィンドウギャラリー】「美・化粧・銀座」建築家・妹島和世による初のウィンドウディスプレイ

SHISEIDO THE STORE が現代作家とともに作る1階ウィンドウギャラリー。建築家・妹島和世が建築模型を使って試みたものとは?

銀座の街中にフワッと浮かび上がるオブジェ。SHISEIDO THE STORE ウィンドウギャラリーでスタートした建築家・妹島和世のインスターレションには不思議な浮遊感がある。展⽰されているのは妹島が⼿がける最新の建築プロジェクトの模型だ。ウィンドウ内の真っ⽩な空間に展⽰された模型は、⼀⾒するとアートのオブジェにも⾒える。

Photo : Takashi Homma
Roof Study Model, Scale 1:100 Kagawa Prefectural Gymnasium, Kagawa Japan
SANAA

様々な都市でショーウィンドウのある建物を設計してきた妹島だが、ショーウィンドウ内部のインスタレーションを⼿がけるのは今回が初めてだ。当初は初めての試みに不安を抱いたという。
「銀座で、そして資⽣堂のビルでショーウィンドウを作るとしたら、いったいどんなことができるのだろうとまず思いました。これまではアーティストがアート作品を展⽰してきたウィンドウなので、初めはちょっと不安だったんです」
展⽰のコンセプトを決めるために、何度もウィンドウを⾒に銀座に⾜を運んだ。
「建物が⾯する中央通りはとても情報量の多い通りなので、ちょこちょこしたものは向いていないと思いました。アート作品は、1 分の1のものを展⽰するから良いけれど、建築だと展⽰物は実際のスケールの何分の1 になってしまいます。興醒めになってしまっても困るなと思いつつ、かといって私が作っているものが建築ですので、突然アーティストみたいなことをやろうとしても無理ですし。やはり建築のスタディで、情報量の多い街中にあっても綺麗に浮かび上がるものにしようと考えました」
妹島が選んだのは、⾹川県⾼松市で進⾏中の体育館や中国で計画されているデザインセンターなど、3つの建築プロジェクトの模型と照明器具のプロトタイプだ。ウィンドウに飾る模型は、ディテールが細かすぎても省略しすぎてもいけない。妹島は展⽰のために模型を新たに作り直した。
こだわったのは、模型にどのくらい⼿作りの要素を残すかだ。例えば体育館の屋根のジョイント部分は、建築模型として必要な要素で、つるりと無機質になると建築に⾒えなくなる。展⽰物としてどこまで抽象化するか。⼯場で作ってもらったものに⼿を加えてゆき、夜中に模型をウィンドウの前に置いて⾒え⽅を試しながら、ある意味でパーフェクトではない仕上げを試みた。
「資⽣堂の建物にもディテールがありますし、ウィンドウには周囲の建物や通りを⾛る⾞も映り込みます。どこまで模型のディテールを残すのか、テクスチャーを出すかの判断が難しかった。でも完成したものを実際にウィンドウの中に置いてみたり、とても楽しかったです」

Photo : Takashi Homma
左:Roof Study Model, scale 1:100 Puyuan Design and Event Center Puyuan, China
Kazuyo Sejima & Associates
右:Roof study model, scale 1:50
SANAA

建物の設計において、ショーウィンドウをどう扱うかは常に難しいテーマだ。建築家はショーウィンドウそのものを作るが、その中のデザインまではコントロールできない。そこには、建築家の意図とは異なるものが突然現れる可能性がある。今回、妹島は他の建築家が設計したケースの中をデザインすることになったわけだが、ウィンドウ回りを囲む⿊い枠や内部の奥⾏き感を考慮しなら、模型の⼤きさを決めていったという。またウィンドウ内のライティングも、全体にフラットに光が回るよう特殊なライトを設置した。

こうして出来上がったウィンドウを、「とても可愛らしくて気にいっている」という妹島。「銀座だといろんな⽅に⾒てもらえるチャンスがありますよね。建築の模型が単に完成予想ということでなく、それ⾃体にも魅⼒があるということを、ほんの少しの⽅でもいいから興味を持ってみていただければと思います。今回、銀座に通ってみて、なんだかんだ⾔ってもやっぱり銀座はいいなとあらためて思いました。私が若い頃はだんだん表参道などが賑わってゆき、銀座がちょっと落ち込んだと⾔われたこともありましたが、銀座はやっぱり底⼒があるんですよね。歴史もあるし、受け継がれてゆく何かがあると思います」

Photo : Nacasa & Partners
銀座・中央通り正⾯から⾒るSHISEIDO THE STORE WINDOW GALLERY
妹島和世

1956 年⽣まれ。美しく軽やかなデザイン性、透明感にあふれる建築を得意とする。プロダクトの分野においては⼥性らしい感性にあふれた可愛らしくユーモラスな作品も多い。横浜国⽴⼤学⼤学院Y-GSA 教授、ミラノ⼯科⼤学教授、⼤坂芸術⼤学客員教授、⽇本⼥⼦⼤学客員教授を務める。建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞ほか、⽇本建築学会賞、村野藤吾賞など多数受賞。

Photo:Kohei Omachi

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